ポバールの使用方法

ポバール (PVA・PVOH・ポリビニルアルコール)は一般的に水溶液にして使用します。
1. 溶解方法
水にポバールを投入し加熱して溶解します。なお、熱源としては水蒸気の直接吹込みやジャケットによる間接過熱が考えられます。溶解液中にポバール粒子が認められなくなれば溶解は完了です。
完全けん化ポバールと部分けん化ポバールでは、溶解方法が若干異なりますので、注意が必要です。
1-1. 完全けん化ポバール
常温の水を攪拌しながらポバールを投入します。よく攪拌しながら、加熱を始め、液温が約95℃に到達後60分くらいで溶解が完了します。
1-2. 部分けん化ポバール
部分けん化ポバールは冷水易溶のため、投入時に大きな塊状物やママコ(だま)を生成しやすいので注意が必要です。投入時の水温は25℃以下に氏、よく攪拌しながらできるだけゆっくりポバールを投入します。
投入後も十分攪拌を続けながら、昇温し、93~95℃まで到達後30~60分で溶解が完了します。
2. 粘度安定性
完全けん化ポバールの水溶席を低温で放置した場合、濃度が高いほど、また放置温度が低いほど粘度が上昇したりゲル化することがあります。増粘の程度はけん化度が低いほど、濃度が低いほど、放置温度が高いほど緩和されます。
3. 水溶液の貯蔵
ポバール水溶液は長期保存しても科学的な変化は起こしませんが、水質、保存容器の材質などによって、腐敗したりカビや錆が発生することがあります。
また、年度が経時的に上昇したりゲル化することがあります。これらの対策として次の方法を紹介します。
3-1. 腐敗・カビ対策
各種防腐剤、防カビ剤を添加して下さい。(100~1000ppm/ポバール水溶液)
3-2. 錆対策
錆びやすい容器は避けて下さい。錆びやすい容器を使用される場合は防錆剤を添加して下さい。(100~1000ppm/ポバール水溶液)
3-3. 増粘対策
完全けん化ポバールの高濃度水溶液等の増粘しやすいものは、水溶液作成後出来るだけ早く使用するか、あるいは希釈して下さい。高濃度溶液を保管する場合は50℃~70℃で保温することをお勧めします。
また、一旦ゲル化した水溶液も加熱攪拌により水溶液としての流動性が回復すれば、ゲル化前と同様に使用できます。
4. 溶液の消泡
ポバールを溶解する際や、ポバール水溶液を使用する際、年度や攪拌速度によっては発泡する場合がありますので消泡剤を添加してください。(500~5000ppm/ポバール固形分)なお、消泡剤を添加した銘柄もご用意しています。
5. 取扱い上の注意事項
5-1. 応急処置
目に入った場合 : 一般の異物が入った時と同様に流水で洗眼し、眼科医の処置を受けて下
さい。
皮膚に付着した場合: 粉末の状態または水溶液の状態で付着した場合、ともに水で洗い流して
下さい。
吸入した場合 : うがいをして新鮮な空気を吸うようにして下さい。
飲み込んだ場合 : ぬるま湯を飲んで吐き出し、すぐに医師の手当てを受けて下さい。
5-2. 火災時の措置
消火方法:水、あるいは粉末消火剤等を使用して下さい。
消火剤 :水、粉末消火剤、炭酸ガス消火剤を使用して下さい。
5-3. 漏出時の措置
粉末: 滑り易いので、こぼれた場合はすぐに取り除き、容器に回収して下さい。
使用できない場合は、一般塵芥と同様に焼却して下さい。
溶液: 滑り易いので、拭き取るか、水で洗い流して下さい。なお、廃水が大量の場合は、活性
汚泥法等で処理して下さい。
5-4. 取扱い及び保管上の注意
取扱い:
- 微粉を含んでおり、溶解槽への仕込み時に粉塵が立つので、皮膚及び目を保護するために、ゴム手袋及び保護眼鏡等をつけて下さい。
- 大量に取り扱う場合には集塵装置を設置して下さい。また、静電気、火花を着火源として粉塵爆発を起こす危険性があるので確実に接地を行い、導電性材料を用いる等の対策してください。
保管:
- 水に溶解するので雨水等がかからないように保管して下さい。
- 吸湿してブロック状になりやすいので高温多湿の場所は避けて保管して下さい。
- 3,000kg以上の保管については、消防法指定可燃物としての規制を受けます。
5-5. 廃棄上の注意
- 粉末状として廃棄する場合は一般塵芥と同様に焼却して下さい。
- 水溶液として廃棄する場合は活性汚泥法等により処理して下さい。
5-6. 輸送上の注意
- 雨水のかからないように幌またはシートを掛けて下さい。
- 手かぎ等、袋を破るような器具を使用しないで下さい。
5-7. 適用法規
消防法:非危険物、但し火災予防法条例により指定可燃物(可燃性固体類又は合成樹脂類)。
6. その他の情報
6-1. 危険有害性の分類
- 分類の名称
分類基準に該当しません。 - 危険性
消防法の非危険物、指定可燃物(可燃性固体類又は合成樹脂類)に該当します。
粉塵爆発の可能性があります。 - 有害性
医薬品添加物規格、及び化粧品基準(厚生労働省告示)に記載されており、有害性は極
めて低いです。
なお、安全性についての詳しい情報は安全データシート(SDS)をご参照下さい。
6-2. BOD値・COD値
水溶液として大量に廃棄する時は、活性汚泥法等により処理して下さい。
6-3. その他
政令指定土壌改良資材(地力増進法)
1958年 | ポバール樹脂 工業化富山でビニロン原料用ポバール生産開始(1978年停止) 1958年ポバール樹脂 事業化市販用ポバール生産開始(富山:1978年生産停止) |
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1996年 | 日本合成化学工業(株)と合弁でポバール生産会社「ポバールアジア」をシンガポールに設立 |
2001年 | クラリアント社のPVA関連事業を買収、製造販売会社としてドイツ(フランクフルト)に「クラレスペシャリティーズヨーロッパ」設立 |
2008年 | ポバールアジア社の全株式を取得し、子会社化 |
2014年 | 米国DuPont社のビニルアセテート関連事業を買収 |